国立大学法人 神戸大学
海洋政策科学部(旧:海事科学部)

仲間と切磋琢磨しながら学んだ4年間、環境も最高でした

海事科学部(現:海洋政策科学部)マリンエンジニアリング学科機関マネジメントコース 4年生富田 達大(とみだ・たつひろ)さん

海事科学部(現:海洋政策科学部)グローバル輸送科学科航海マネジメントコース 4年生山岸 楓(やまぎし・かえで)さん

富田達大さんと山岸楓さん

練習船「海神丸」をバックに、富田達大さん(右)と山岸楓さん

富田 達大(とみだ・たつひろ) さん

心身ともにタフで、周囲から信頼される機関士になりたい

富田達大さん 機関士をめざす富田さん
Q:入学前には航空宇宙分野への興味があったそうですが、外航船員になりたいと思った経緯について教えてください。

A:2回生のときに体験した1か月間の乗船実習が大きいですね。まず船での生活が向いていると思ったこと。普段はなかなか習慣化できない早寝早起きができ、3度の食事が美味しく、また船上での筋トレも楽しく、気がついたら体が元気になっていました。総じて船の上の生活に適応できているのだなと思いました。二つ目は夜間航海中に見た星空の美しさですね。四国の沖を航行中だったと記憶していますが、空全体に見たこともないぐらいたくさんの星が瞬いていたんです。まさに満天の星。星座盤にも出ていないような星や流れ星も見えて、体が震えるほど感動しました。そうした経験から船の仕事をしたいと思うようになり、もともと理系に関心があったので、機関士をめざそうと考えました。それがマリンエンジニアリング学科機関マネジメントコースを選んだ理由です。

Q:資格試験は大変でしたか?

A:試験勉強を始めた当初はとても難しく感じられ、脳が理解を拒んでいました(笑)。しかし、神戸大学では早いうちから機関室シミュレータを使って、事前に知識を持ったうえで練習船に乗れます。練習船から戻ってもシミュレータでさらに理解を深められるのもいいですね。また、3か月間の乗船実習も役立ちました。船の部品などを目で見たり触ったりすることで、座学で得た知識が身につく実感がありました。また機関長の授業では、現場を経験された方ならではのリアルなお話がうかがえたこと、さらに資格試験のポイント、勉強方法を聞くことができてたいへん参考になりました。

富田達大さん 海神丸の機関室で
Q:海や船が身近にあるキャンパスライフはいかがでしたか?

A:ぼくは海に接していない内陸の県出身なので、海に憧れがありましたから、海が近くにあるだけでテンションが上がりましたね。さらに、同期生の中には船に関する知識が豊富だったり、センスがあったり、あるいは人格的にも素晴らしい仲間がいたので励みになりました。一緒に試験勉強するほど仲がいい同期でも、負けたくないという気持ちも生まれて刺激を受けました。そうした仲間との切磋琢磨によって成長できたと思います。

Q:神戸大学での学びを通して知った外航船員という仕事の魅力を教えてください。

A:いきなり海事科学という専門的な世界に踏み込みましたが、乗船実習など初めての体験を積み重ねることで、陸上生活では味わえないことを経験できるのが醍醐味ですね。神戸港から大阪湾、和歌山沖から小豆島に行って戻るというコースを1か月かけて帆船で航行するという実習をしていたときのこと。台風の接近があり、台風特有の風に対応するためにヤードの向きをたびたび変えなければなりませんでした。風に負けないように手の皮が剥けそうになるぐらい、みんなで綱を引っ張った経験は貴重です。船の上では、気象などさまざまな変化に冷静に対応しなければなりません。練習船の先生のように、どんな質問にも瞬時に答えられるよう船の知識や体験を積み上げる必要があるし、どんな困難に直面しても乗り越えていけるような、心身ともにタフで、周囲から信頼される外航船員をめざしたいです。外航船員という仕事の魅力は、多くの人にとってかけがえのないものであるので、これからも勉強と経験を積んでいきたいです。

山岸 楓(やまぎし・かえで) さん

学生が実際に操船する環境が用意されているのは貴重です

山岸楓さん 航海士をめざす山岸さん
Q:神戸大学海事科学部(現:海洋政策科学部)を選び、航海士をめざしたきっかけや理由を教えてください。

A:海を渡って世界をつなぐ海技士の仕事に憧れがありました。また、海技士資格を取得できるので、神戸大学海事科学部を選びました。入学後、実習などで航海士の方とお会いすると、船を安全に運航させることに真剣で、小さなことにも気を配りながら大きな船を運航する姿を見てカッコいいと思ったし、魅力を感じました。さらに、先輩の話を聞く中で実習など実技が多いことを知り、そうした授業のほうが知識を身につけやすいと思い、航海マネジメントコースを選び、航海士をめざしました。

Q:航海士をめざすうえで、印象的だった授業は?

A:カッター実習ですね。小型の船を12人が漕ぐ実習で、2回生以降毎年受けます。2~4回生が同じ船に乗り、違う役割を担いながら、船の運航に関する技術を身につけつつ、リーダーシップや組織としての取り組みを学びます。2回生では先輩方から漕ぎ方を教わり、3回生でリーダーの在り方について学び、4回生では管理者としてチーム全体の方針を決めます。一番印象に残っているのは3回生のときです。艇指揮という指示を出す役割を担当したのですが、自分の指示で船を動かすという責任はかなり重いものでした。先輩からリーダーシップのとり方を指導していただきましたが、それでも難しかったのは指示の出し方です。性格的に厳しい指示を出せるタイプではないからです。今にして思えば、自分の判断に自信をもって迷わずに指示を出せていれば、おのずと指示の仕方にも反映されたのではないかと思いました。とはいえ、苦しんだからこそ学ぶことも大きかったですね。
カッター実習のように、航海科は違う学年が一緒に同じ授業を受けることがあって、大学にいながら、中学や高校の1クラスのように過ごせます。先輩に資格試験のことなどを教えてもらえるのもいいですが、次第に頼ってくれる後輩ができてくるのも嬉しいですね。

山岸楓さん 海神丸の船橋で
Q:キャンパスライフはいかがでしたか? 楽しい思い出があれば聞かせてください。

A:キャンパス内にポンド(係船池)があり、練習船「海神丸」が係留してあるのは非常にありがたい学習環境でした。長期の乗船実習ですべて理解できるわけではないんですね。例えば甲板機器の取り扱いやレーダーの使い方などについて理解があいまいだなと思った部分を、海神丸で落ち着いて復習したり、先生に質問したりすることができます。全長が約60mの船なのですが、それを自分たちで操船できる環境があるのは貴重だし、この大学で学ぶ大きなメリットだと思います。また、先日、ゼミの活動の一環で、ある地方の伝馬船を使ったイベントに参加しました。子どもたちに伝馬船のことを教えたり、海が好きな同期たちときれいな海に飛び込んだりして、とても楽しい時間を過ごしました。

Q:神戸大学海事科学部(現:海洋政策科学部)の良いところ、ここでしか学べないものがありましたら、教えてください。

A:先生方もとても親しみやすい方ばかりで、全体的に非常にアットホームな環境で日々を過ごしています。そのおかげで、いろいろな個性の人との出会いがあり、考え方に触れることができる点がとても素晴らしいと思います。神戸大学海事学部では、自分たちで考え、実施する力を身につけることができます。さまざまな実習を行う中で、先生方は安全の範囲内で私たちの思うように実践させてくれます。言われたことをこなすだけではなく、最終的な目的のためにどうアプローチし、どうチームワークを発揮していくかなど、海事に関することだけではなく社会に出てからも役立つ術を学ぶことができます。

富田さんは機関士として、山岸さんは航海士としての目標を決め、
神戸大学海事科学部で切磋琢磨しながら学んできました。
共に外航海運会社で働くことが決定。
豊富な実習を通して得た知識や技術をからだに刻み込んだ二人が、世界の大海原に向けて漕ぎだします。

富田達大さんと山岸楓さん (2023年9月取材)
*神戸大学では、2021年度に海洋政策科学部が新設され、2021年度入学者からは海洋政策科学部生として学んでいます。

商船系大学生インタビュー

商船系大学への進学の決め手になったものは? 卒業後の進路は、いつ、どのように決めたのか?
航海士・機関士をめざし、夢をかなえて就職が決まった大学4年生のリアルな声をお届けします。(2023年取材)