国立大学法人 東京海洋大学
海洋工学部
外航船員は圧倒的にやりがいのある仕事。
その夢に向かってまっすぐに進めます
海洋工学部海事システム工学科 4年生石森 日向(いしもり・ひゅうが)さん
※機関士養成の環境については大学ご担当者からうかがいました。
練習船「汐路丸」をバックに石森日向さん
石森 日向(いしもり・ひゅうが)さん
外航船員になりたいと思って
東京海洋大学に入学しました
A:外航船員という職業を初めて知ったのは、高校主催の講演会のときでした。東京海洋大学の先輩で進路が外航船員に決定した人の話を聞いたのです。父方の祖父が漁師で、幼い頃はよく遊びに行っていたので海や船が好きだったし、大きな船で海外に行けるのも夢のある仕事だと思いました。また、「手に職をつけたい」という希望もあったので、海技士の資格を取れることは魅力でした。東京海洋大学は大学全体で海洋を専門とする国内唯一の国立大学で、ここで学べば、海や船に対してより深い知識や経験が得られるだろうと考え、オープンキャンパスに2度足を運びました。また、東京湾体験クルーズをしたとき、たくさんのコンテナ船が見えるなど素晴らしい景色に感動したことも影響しました。東京海洋大学に進むという私の選択に、水産高校で乗船実習をした経験のある父も喜んでくれましたし、母も応援してくれました。
Q:入学後、海事ステム工学科を選んだ理由は? 印象的だった授業は?A:外航船員を目指すうえで航海士と機関士、どちらかを選ぶことになります。私は、制服を着て大きな船を動かす航海士の姿に純粋な憧れを持っていましたので、海事システム工学科を選びました。
最も印象的な授業は、大学の練習船・汐路丸での揚投錨実習です。千葉の館山湾内で錨を揚げて湾内を航海し、元のポイントに戻って錨を降ろすところまでを行う実習を、計画から実行まで学生主体で行います。この実習のルールはGPSや電子海図を使わないこと。紙海図を頼りに目印を決めながらルートなどを検討していくのですが、じっくりと長い時間をかけて班のメンバーと計画を立てました。しかしいざ航行すると、漁船が多数停泊しているのに遭遇するなど、計画では想定していなかったことに直面しました。私は全体の指揮をとって船を動かす役目を担っていたので、とっさの判断を迫られました。自分の考えで操船するという初めての経験だったので大変緊張しましたが、班のメンバーとのコミュニケーションの大切さを実感したり、船員としてのやりがいを感じたり、充実した実習となりました。
東京海洋大学海洋工学部には、航海士をめざすことができる海事システム工学科と、機関士をめざす学生が進む海洋電子機械工学科があります。
海事システム工学科では、航法の概念を理解するために必要とされる基礎知識を習得する「航海システム概論」、レーダや自動衝突防止援助機能の概要や性能、使用法などを学ぶ「レーダ・シミュレータ演習」などのカリキュラムが用意されています。海洋電子機械工学科機械システム工学コースでは、蒸気タービンプラントを題材に熱機関および熱流体工学について学ぶ「ターボ動力工学」や、制御システムの仕組みを学ぶ「制御工学」などの専門科目を設けています。また航海士・機関士の両コースとも、座学で学んだ知識を実際の船舶機器に触れながら体感することを通して実践的な能力に高めるための乗船実習や実験など、海技士免状取得に必要なカリキュラムが充実しています。
A:寮のルームメイトが機関系の同学年なのでよく話をします。航海系の醍醐味は大海原を見ながら自分の手で操船することです。それに対し機関系の良さは、商船だけでなく幅広く応用が利くこと。「船は小さな町」と呼ばれるようにインフラが船の中で完結しており、そのメンテナンスなどを行うのは機関系です。本当に大きな機械なので、幅広い知識が必要になりますが、そこで培われた知識や技術は、船以外の世界にも応用できるのが機関系の強みであり、魅力です。航海系と機関系が共に学ぶことで、気づきが得られる環境もよいところです。航行中に速度をむやみに上下させないほうが良いことを、機関系の彼から教えてもらいました。車などの小さなエンジンと違って船の大きな機関に急な加速・減速で負担をかけると、故障の原因になったり、機関寿命を縮めたりすることがあるというのです。
船のスペシャリストと言える
航海士になりたい
A:概論の授業ではありますが、資源環境や生物資源について学べる点です。1年次の必修授業で、海洋系総合大学ならではのものと言えます。学ぶ環境面の特徴は、同学年が60人ほどなので、少人数の講義や実習が多く、先生との距離が近いことです。学業だけでなく、普段の生活から就職活動までいろいろな話をしてくださるし、聞いてくださいます。さらに実習・実験のための設備が整っていて、実技教育を受けるのに最適な環境です。
海事システム工学科には、乗船せずとも正確で臨場感ある操船環境を再現できる操船シミュレータや船の運動性能を精密に計測する船舶運航性能実験水槽などの設備があります。海洋電子機械工学科には、機械系、電気系、制御系の豊富な実験・実習が用意されています。実験・実習にはエンジンルームシミュレータや電子制御式船用2ストロークディーゼルなどを活用し、授業で得た知識を定着させます。また、合計2か月間の乗船実習があり、船上で実際の船舶機器に触れながら仕組みを理解できます。海事産業エンジニア、機械・電気系メーカエンジニアを含む幅広い分野で活躍できる力が身につくのも魅力です。
A:海技士の資格試験は大変でしたが、将来の姿を想像し、モチベーションを高め、頑張りました。目標としては「こいつが乗っていれば安心だ」と思われるような航海士になること。船上では常に少人数で共同生活をしながら仕事しますから、人間関係はとても大切です。しかも知識・実務能力を身につけなければなりません。自ら知識・技能を吸収し、安心して仕事を任せてもらえるような航海士になりたいです。
同時に、”船乗り”として船や運航に関してなんでも答えられるような存在でありたい。もちろん将来的には船長として船を運航することも夢ですが、同時に陸上勤務も多くなります。そこで求められるのは、船乗りとしての知識や技能、実務能力、あるいは視点です。それを陸上でも遺憾なく発揮できるようになりたいです。
A:外航船員は船を運航するほかに、荷物や書類作業、メンテナンスなどさまざまな仕事があり、船に対するプロフェッショナルにならなければなりません。また運航には、航海学・法律・英語・コミュニケーション・体力……多様な能力が要求されます。こうした能力を身につけた航海士という仕事は、圧倒的にやりがいがある職業です。またスケールの大きさなどにおいても特別な仕事ですし、魅力のある職業です。この大学で夢に向かって走っていけば、講義・実習・演習がもりだくさんで、目標を見失うことはないと思います。
私は勉強や部活(剣道部)の活動以外に、学生寮の寮長も務めていました。寮生をまとめるのは大変なこともありましたが、友人、先輩後輩にも恵まれ、有意義な時間を過ごせました。“シーマンシップ"という言葉があります。船乗りの技能に加え、規則遵守、マナー、挨拶、整理整頓といった船が安全航行するために必要な船乗りの心得ですが、それを寮生活においても学べました。東京海洋大学には、海で働く者にとって必要なことをいろいろな経験から身につけられる機会が用意されており、まっすぐ夢に向かって進んでいける大学です。
進路のサポート体制も充実しています。学生が生涯を通じて活躍できるようサポートするキャリア支援センターでは、進路相談や就職イベントなどで学生の就活を応援するほか、乗船実習科や大学院への進学指導も行っています。さらに、学年担当教員や研究指導教員のサポートも受けることができます。その結果、高い就職率を維持しています。
卒業後は、外航海運会社で働くことが決まった。
(2023年9月取材)