2025年インタビュー

国立大学法人 東京海洋大学
海洋工学部

「世界中の海の上」が
私たちの仕事場

海洋工学部 海洋電子機械工学科 4年高澤 利奈(たかざわ・りな)さん

海洋工学部 海事システム工学科(乗船実習科所属(令和7年4月~9月))羽田 真知子(はだ・まちこ)さん

高澤利奈さんと羽田真知子さん

実習などに使った練習船「汐路丸」をバックに(左:羽田さん、右:高澤さん)

高澤 利奈(たかざわ・りな)さん

海上でも陸上でも活躍できる
機関長を目指す

高澤利奈さん 「商船系高専からの編入だったのですが、優しい人が多くてすぐクラスになじめました」
Q:どういうきっかけで外航船員になりたいと思いましたか? また高専から大学に編入した動機をお聞かせください。

A:将来の目標が見つからず進路に悩んでいた時に、「外航船員は世界中の海の上が職場であり、物を運ぶことを通じて人々の暮らしを支える仕事だ」ということを知り、大きなやりがいが感じられる仕事だと思いました。そこで富山高等専門学校商船学科に入学したのですが、3年生の時コロナ禍に入ってしまった影響で、高度な専門知識を学んだり実習したりすることが十分できませんでした。このまま外航船員になることに不安を覚え、大学で学びなおしたいと考えました。大学3年生からの編入で、なじめるかが少し不安でしたが、実習をする中でクラスメートと仲良くなれました。

Q:なぜ、機関士を目指そうと思ったのでしょうか? また大学で印象に残る授業、資格試験の勉強を通して考えたことを教えてください。

A:機関士を目指すのは、高専在学中に練習船で実習していた時、エンジンプラントを管理し自分の手で大きな船を動かすことに魅力を感じたのが一つ。もう一つは、海水をくみあげ塩分のない清水(せいすい)を作る時、海水を加熱して水蒸気を集めるのですが、加熱する際に使うのは電気ではなくエンジンの排熱なんです。無駄のない合理的なエンジンプラントに魅力を感じ、もっと知りたいと思いました。
印象に残っている授業は、大学の練習船「汐路丸」での実習ですね。「主機関推進」、「電気推進」、汐路丸のような「ハイブリッド推進」、それぞれの推進システムで計測を行い、出力や燃焼効率、環境性能などさまざまなパラメーターで比較する課題でした。それまで座学で学んだ知識を総動員して比較材料を算出するので、今まで勉強してきたことが機関士に必要な知識の基礎となっているのだと実感できました。
海技士の筆記試験は、授業を受けることで対応できるようになりました。初めて受験した時は、学んでいない分野が多く、理解するまでに時間がかかりました。しかし授業や乗船実習などを通して知識を身に付けることで参考書の内容を理解できるようになり、それからはだんだん自分にあった勉強法を見つけ試験に臨むことができたと思います。資格試験勉強の助けになったのは、同じコースの学生の多くが外航船の機関士を目指していたので、一緒に勉強できたことですね。面接対策をしたり、情報を共有しあったり、常に高い意識でそれぞれに取り組む姿に刺激を受け、切磋琢磨した時間はかけがえのないものです。私自身のことを振り返ると、学生生活において機関士として活躍したいという目標がなければ、モチベーションを高く持って学業に取り組めていなかったと感じます。自分が叶えたい目標を明確に持って学ぶことが自分の成長につながったと思います。

高澤利奈さん “動くキャンパス”と言われる「汐路丸」の中でも講義が行われる。
Q:いまの学科や大学が優れているところを教えてください。

A:実験や実習の設備が充実していることです。なかでも私が一番驚いたのは、学内での実習で2ストロークエンジンを動かせるところです。これまで見たのは4ストロークエンジンで、どちらかというと発電機に使われていることが多い。それに対して2ストロークエンジンは、特に大型船のように強い推進力が必要な船に搭載される頻度が高いのです。主機関としての2ストロークエンジンに触れられたことで、理解が一層深まりました。
実習を通して、入学前に抱いていた機関士のイメージが変わりました。入学前は、機器類の整備が機関士の主な仕事だと思っていましたが、実際は機関室のプラント全体を把握して管理することが重要であることがわかりました。そのために大学では機械工学だけでなく幅広い工学分野を学ぶカリキュラムがあるのです。東京海洋大学では、機関士はもちろんですが、製造業など幅広い分野で活きる多くの工学分野を学ぶことができます。

Q:どんな機関士を目指していますか?

A:信頼される機関士です。機関士は自分1人だけで仕事はできないので、協力してくれる人たちとの信頼関係が大切です。自分のやるべき仕事を計画的かつ確実に行うのはもちろんですが、それだけではなく、日々のコミュニケーションを大切にし、常に思いやりを持った人でありたいと思います。自分本位にならず誰かのために動けるような機関士になれたらと考えています。将来的な目標は機関長になることです。機関士としてのノウハウを活かし、海上でも陸上でも活躍できる海技者になれたらと考えています。

羽田 真知子(はだ・まちこ)さん

好きなことを好きなだけ
学べる大学

羽田真知子さん 自然豊かな越中島キャンパスでインタビューに答える羽田さん。
Q:入学の動機や決め手をお聞かせください。

A:高校の先生と話していた時、「海、好きだったよね。船乗りはどう?」と言われたのがそもそものきっかけでした。調べてみると、外航船員というのは、好きな英語が日常的に使える仕事で、現場で働いて技術を身につけられることがわかって、「この仕事だ」と直感しました。高校2年生の時、好きな帆船について調べる課題に取り組む中で、東京海洋大学の教授を訪ねたのですが、目にした歴史ある建物や自然豊かな越中島キャンパスがとても気に入り、ここしかないと思いました。

Q:どんな授業が印象に残っていますか? 東京海洋大学のよいところ、自慢できるところといえばどんなことでしょうか?

A:印象に残っているのは、JMETS(独立行政法人海技教育機構)の練習船「海王丸」という帆船を使った実習です。この船は帆船です。帆船はいまでこそ商船としては使われませんが、自然の影響を受けやすいので、前線の動き、風の向きや強さなど、天気の予測を綿密にしなければいけません。天気図を囲んでみんなで議論した経験が貴重でした。就職先の社船実習で乗った船が風の影響を受けやすい自動車運搬船だったので、実習の大事さを実感しました。
校歌に「好きなことを好きなだけ学べることは倖せ者だよ」という歌詞がありますが、東京海洋大学はまさにそんな学校です。大学4年生の時に、アメリカで開催されたIAMU(The International Association of Maritime Universities 国際海事大学協会)主催の大会で、卒業論文を英語でプレゼンテーションしたのですが、それを先生が丁寧に支えてくださいました。論文のテーマは、研究室の先生が開発した新しい錨の性能に関するもので、英文への翻訳・添削、スライドづくり、そして発表・質疑応答に関しても丁寧に指導していただきました。勉強になることばかりでした。これだけ綿密なサポートを受けられたのも、学生に対して先生の数が多いという大学の特色だと思います。
好きなことといえば、4年間所属したヨット部の活動もそうですね。毎週土日は練習、夏と冬の長期休業中は江ノ島で週5日間の合宿がありましたので、海技士の試験勉強中は両立が難しかったのですが、いまとなってはいい思い出です。

羽田真知子さん 凜々しい制服で。
Q:航海士を目指して勉強を続けてこられた理由、そしてどんな航海士になりたいかを教えてください。

A:一緒に航海士を目指す仲間が周りにいたこと、そして先輩や先生方からの応援があったからですね。実際に勉強してみると、航海士の仕事は想像していたよりも多岐にわたっていました。操船だけではなく、荷役、船体の構造、条約や法規、気象海象、天文、機器の整備、火災の場合には消火活動、また応急手当や衛生管理のような身の回りのことなど幅広い知識や技能が必要だと知りました。航海を安全かつスムーズに続けるために、いろいろな役割を引き受ける航海士という職業に一層魅力を感じました。
将来の目標ですが、社船実習に取り組む中で、目指す航海士像が明確になりました。右も左も分からなかった私に、キャプテンやサードオフィサーをはじめたくさんの士官の方々が、惜しみなく指導してくださいました。例えば出入港の時は多くの船がいて緊迫する場面なのですが、冷静な判断の仕方、注意すべきポイントなどを理路整然とわかりやすく教えてくださいました。その姿を目の当たりにして、こういう航海士になりたいとつくづく思いました。人に教えられるようになるためには、まずは自分が知識や経験を身につけ、深く理解して整理することが必要だと思うので、常に学びの姿勢を崩さずたくさんのことを吸収していきたいです。
私もいつかは結婚や出産、育児をしたいと考えています。そんな時でも家庭と航海士を両立することができたらいいなと思います。先ほどの社船実習のキャプテンは女性でしたし、企業の出産・育児への支援体制も整ってきているように感じます。

Q:進路を検討している人にアドバイスをお願いします。

A:海や船に少しでも興味があるなら、ぜひ一度大学に足を運んでみてほしいと思います。他の大学にはないキャンパスライフを送れること間違いなしです。学生は男子ばかりというイメージがもたれがちですが、私の同期の女子は入学時、60人のうち10人いましたし、就職先についても女性の受け入れは拡大していると感じます。
外航船員はとてもスケールの大きな仕事です。自然を相手に大きな船に乗って航海し、他国の港に入港すれば異なる文化を体感できます。また日本と世界をつなぐ物流の最前線を見ることができるのは大きな魅力です。乗組員一人ひとりの責任や裁量が大きいため、学びが多くやりがいのある仕事です。

高澤さんは機関士として就職先が決まり、
羽田さんは航海士としてすでに勤務先での社船実習の真っ最中でした。
好きなことを好きなだけ学んだ2人が、海のスペシャリストを目指します。

高澤利奈さんと羽田真知子さん 「一緒に船員を目指し切磋琢磨できる仲間や先輩・後輩に出会える大学です」と羽田さん。(2025年12月取材)

商船系大学生インタビュー

商船系大学になぜ惹かれたのか?大学ではどんな授業や実習があり、どんな刺激を受けたか?
クラブ活動などキャンパスライフは充実していたか?さらに将来の進路をどのように決めたのか?
……など、商船系大学で機関士と航海士をめざす学生に詳しく聞きました。(2025年取材)