東海大学
海洋学部
「望星丸」で培った
航海士の知識と技術で大海原を進む
海洋学部 海洋理工学科 航海学専攻 3年山本 江龍(やまもと・こうりゅう)さん
海洋学部 海洋理工学科 航海学専攻 2年大塚 万葉(おおつか・まよ)さん
富士山を望むロケーションで、夢への学びを。(右:山本さん、左:大塚さん)
山本 江龍(やまもと・こうりゅう)さん
少人数制で教授にいつでも
質問できる学修環境
外航船員の魅力や将来の目標を語る山本さん。
A:幼い頃は、トラックや貨物列車が好きでしたが、世界的な視点でみると、日本の輸出入の99.6%を海上輸送が担っていることを知り、社会や経済の基盤を支える海運と、活躍の場が全世界に及ぶ外航船員に魅力を感じるようになったのです。大学選びをする上で、外航船員になるために必要な三級海技士を取れることを1つの目安としていました。東海大学では少人数で教育を受けられることや、海洋調査研修船「望星丸」一隻で継続的に実習ができることに魅力を感じ、受験しました。こうした動機があったため、コース選びに迷いはありませんでした。
Q:東海大学に入学し、実際に授業を受けて、頭に描いていたイメージと合っていましたか?A:イメージ通りでした。まず1クラスが約20人と少人数で、航海学専攻の先生7人が教えてくださいます。しかも4年間同じ先生が担当ですから、気心が知れていることもあって、授業に関してわからないことがあれば、いつでもどんな方法でも丁寧に教えてくださいます。先生の部屋に伺うのはもちろん、チャットツールでも質問できます。自分が理解できるまで質問できるのはありがたいです。「望星丸」での実習も、想像どおりでした。船は航海だけでなく、観測作業や船の運航管理などさまざまな目的で利用しますが、同じ船で実習するので、より理解を深めることができるのです。また、「望星丸」の乗船教官にも質問しやすく深い学びにつながっている実感があります。一隻の船を詳細に知ることは、物差しをたくさん持っていることと似ていると思います。他の船を見た時、たくさんの似たところ、違いなどを見つけて、理解するのに役立つと思うのです。
物理、数学、気象、英語など幅広い分野の知識を身に付け、一人前の航海士に。
A:印象に残っているのは、3年次の「運用通信実習2」です。航行に約1カ月かかる清水→松山→神戸→東京湾→清水という航路を3区間に分け、1区間を5、6人の班が海図などを調べて航海計画を立てる実習でした。私たちは後半の神戸→東京湾→清水を担当したのですが、東京湾周辺は法律的な縛りが多いため、どういうルートを選択すればよいのかを判断することが難しく、教授や補助学生の先輩にも相談しつつ、仲間と悩みながら議論したのはよい経験になりました。その後の「海洋実習3」では、望星丸でその航路を航行し、自分たちの航海計画がどうだったのか、実際の海域で確認することもできました。資格試験は大変ですね。入学後二級海技士筆記試験と第三級海上無線通信士の2つの資格に取り組みますが、授業や実習の合間に勉強時間を見つけるのに苦心しました。大変なときもありますが、教授が丁寧にフォローしてくれるのはありがたいです。勉強に疲れたら友人と車に乗って、清水港や近隣の港に停まっているクルーズ船や大型貨物船を見に行き、気分転換しています。「あのような船の航海士になるために勉強しているんだ」というモチベーションにもなりましたね。
Q:航海士になるという目標を持ち続けられたのはなぜでしょう。将来、どんな航海士になろうと思いますか?A:自分の仕事がより多くの人の役に立つのがとても素敵だという思いが強かったからです。実は入学前、航海士の主な仕事は操船だと想像していましたが、貨物の管理や荷役も重要な仕事であることを学んで、航海士の仕事のイメージが広がりました。
大学入学前から教えを乞うている外航船の船長がいるのですが、その方の言葉「ただ貨物を運ぶだけでなく、そこに船員はどんな思いをのせることができるのかを考えなさい」を胸に刻んでいます。つまり、ただ物をA地点からB地点に移動させるだけでなく、運んでいる製品の物づくりに関わったり、ここまで運んできたりした人たちの思いを受けて、それを使う人に届けるという気持ちで運べたらと考えています。将来の夢は、船長になること。航海士として働く中で確実な技術と経験を身につけて、頼りがいのある船長になることが目標です。
大塚 万葉(おおつか・まよ)さん
日本の物流の根幹を支える
一流の航海士を目指す
「私の学年は授業中に手を挙げて質問する学生が多いので、授業中にほぼ問題解決できます」
A:まずクルーズ船への憧れがありました。私は高校時代、カナダに留学し、バンクーバーアイランドのヴィクトリアに住んでいたのですが、夏になると、外国航路のクルーズ船が寄港するのをよく目にする機会がありました。巨大で豪華絢爛な姿を見るのが大好きで、乗船したらどんな景色だろうと想像していました。また制服を身につけた航海士が船上で働く姿にも憧れを抱いていました。
Q:授業や資格試験の勉強で印象に残っていることはありますか?A:まず面白かった授業は「駿河湾学」ですね。私はもともとクジラやイルカといった海洋生物が好きで、カナダで海洋生物を勉強するコースに進もうかと思っていた時期がありました。だから駿河湾の生態系、深海生物などについて学ぶのは楽しかったです。航海士に関連する授業で印象的なのは、1年次の秋学期に受講した「運用学1」ですね。航海士を目指す者にとっては重要な航海学の基礎の講義です。船に関する定義や語句をたくさん学びました。例えば、船の長さには「全長」「登録長」「垂線間長」など、さまざまな種類があることを知り、これから本格的に船について勉強を始めるのだと気分が高まりました。海技士試験の勉強を始めて改めて思ったのですが、基礎の勉強は大切ですね。1年次に二級海技士の筆記試験を受験したのですが、1科目も合格することができませんでした。初めて見る内容がほとんどであったことや、勉強の方法も完全に手探りだったので非常に苦労しましたが、基礎から勉強しなおして2年次に合格できました。少人数制のコースなので、みんな同じ目標を持っており、助け合いの精神が強く、互いに教え合えたこともプラスに働いたと思います。
海図をチェックする大塚さん
A:学校が駿河湾や清水港と近いことですね。清水港からはクルーズ船やJAMSTECの「ちきゅう」という調査船など、いろいろな種類の船を見ることができるので、自分が将来どんな船に乗りたいかなどをイメージしやすいと思います。8号館4階の「PLAT(ぷらっと)」というスペースを勉強するときによく使うのですが、そこから見える駿河湾と富士山の眺めは素晴らしいですし、いろいろな種類の船が行き交う様子も見ることができて飽きないです。
Q:勉強をする中で航海士の仕事について新たな発見はありましたか? また将来、どんな航海士を目指しますか?A:航海士の仕事の幅広さに気づかされました。航海当直だけでなく、書類作業が多いし、船の機器にIT技術が導入されているので、IT関係の勉強も必要です。現時点での私の希望は、世界中を航行できる外航船の航海士です。実は、短期アルバイトで乗ったフェリーの三等航海士が、航海士としての私のロールモデルです。30代前半の男性なのですが、オフの時はにこやかなのに、仕事となると真剣そのもの。失礼ながら少しおっちょこちょいの部分が私と似ているので、弱点をどうカバーしているのかを聞いたりして勉強になりました。例えば航海中の見張り・当直業務をする“ワッチ”中は、船が衝突する危険性がないかなどを見なければいけないのですが、疲れていると注意散漫になりがちです。見落とすことのないように自分の性格に合ったチェックリストを作り、抜けが絶対に生じないような準備をされていました。この方のように仕事に対して真摯で実直な航海士になって、日本の物流の根幹を支えたいと考えています。目指すのは一流の航海士。私の考える一流とは、まずどんな時でも前向きに仕事に取り組み納得いくパフォーマンスが発揮できる人、しなやかで自力のある真のプロフェッショナルです。
航海士を目指す山本さんと大塚さん。
少人数制で互いを助け合い、刺激しあいながら資格取得などさまざまな困難を乗り越えます。
仲間とともに歩んだ経験は航海士として働く時に生かされます。
国際信号旗で、「UW」を掲揚すると「ご安航を祈る」を意味する。2人にも「UW」を送りたい。(2025年12月取材)