2025年インタビュー

広島商船高等専門学校

輸入に依存する日本を海上輸送で支える
そんな船員を瀬戸内海の島の高専が育てる

瓜生健心さん

広島商船高等専門学校は、瀬戸内海のほぼ中央に浮かぶ島・大崎上島にあります。四方を海に囲まれたこの学校には、商船学科の他に、2025年4月からは流通情報マネジメント系などを学べる総合科学科が新設されました。気候温暖なこの地で、商船学科の瓜生 健心(うりゅう けんしん)さんが学生生活の中で学んだこと、機関士としてどんな未来を描いているのかなどについて聞きました。

波の高さ、風の向きが常に変化する海
何が起こるかわからないところが魅力

瓜生健心さん

商船学科機関コースの瓜生さんが、商船系高専を志望した理由は、幼い頃の思い出にあったようです。
「祖父の友だちが船を所有していて、その船を見たり乗せてもらったりする機会があったんです。少ない人数で大きな船が動くことを知ったときに、私も船を動かしてみたいと思うようになりました」
また海の魅力を聞くと、「海はいつも波の高さや風の向きなどが変化していて、何が起こるかわからないところ」をあげます。人が難しいと思う部分にかえって興味を引かれたようです。
瓜生さんが目指すのは外航船員。その理由は何でしょう?
「日本は海に囲まれていて、輸入に頼っているため、船乗りがいないと経済は止まってしまうし、衣食住が成り立たなくなってしまいます。たくさんの人々の必要を支える物資が海上輸送によって運ばれていると知り、自分も輸送を通じて日本を支えたいと思うようになりました」

フィリピンへの留学プログラム
現地の人との触れあいが刺激的

瓜生健心さん

島にある学校ゆえ、海や船がいつも身近にある環境が整っています。そのメリットを尋ねると、「船についてわからないことがあると、すぐに聞きにいったり、実際に船を動かしたりして自分の身体で体験ができるのがよかった」と言います。
授業で印象に残っているのは、練習船に乗る1カ月間の実習だといいます。いつも通る瀬戸内海とは違った「外海」に出た経験によって、新しい知識を得て、貴重な体験になったそうです。さらに……
「3,4年のときに、外航船社による留学プログラムに参加したのですが、この実習は大きな体験でした。行き先はフィリピンで、現地の実習生などと交流し、英語でコミュニケーションを取るのは刺激的でした。そのときに知り合った富山高専から参加の学生とも仲良くなりました」

上下関係を学べる部活や寮生活
就職してからもその知恵を生かす

瓜生健心さん

課外活動で印象に残っているのは、所属するカッター部での練習。ポジションはエースの7番。瀬戸内海は晴れが多く海も穏やかなので、毎日練習ができて楽しかったといいます。部活が終わり寮に戻っても、気の置けない仲間がいます。多くの仲間との生活も自分が成長できるきっかけになったと話します。
「上下関係がしっかりしている代とそうではない代がありますが、自分の代は前者で、先輩をみたらしっかりと挨拶していました」
こうしたよき上下関係を、瓜生さんは将来、機関士になってからも活かしたいと考えているようです。
「自分が担当する機械だけでなく、機関室全体に目を配れるような機関士になりたいです。また、機械の十分な知識、経験を後輩に丁寧に教えられる存在になりたいです」
先輩から後輩へ――広島高専で培われた、厳しくも仲間を慈しむチーム力が受け継がれていきます。

商船系高専生が語る
船と海と夢

教室だけではなく、船や海での実習を重ねながら、航海士、機関士としての知識と技術を身につけていく商船系高等専門学校。
5校の高専生が、商船系高専を志望した理由、学校での学び、船の魅力、海への思い、そして将来の夢を語りました。(2025年取材)