2025年インタビュー

大島商船高等専門学校

海を越えて人や物を運ぶ――
船とは、人間の挑戦と知恵の象徴だ

江藤智哉さん

大島商船高等専門学校は、山口県東部、瀬戸内海に浮かぶ周防大島にあります。本土とは大島大橋で繋がっています。本科は、商船学科のほか、電子機械工学科,情報工学科の3学科。練習船「大島丸」は4代目となる新造船が2023年に誕生したばかりです。商船学科航海コースの江藤智哉(えとう ともや)さんが、学校で学んだこと、夢などについて話してくれました。

高専への進学に反対した親を
毎晩食事の時間に説得し続けた

江藤智哉さん

「グローバルな職業につきたい」
江藤さんは小学生の頃、何となくそう思っていました。オーストラリア出身である母親の影響もあったかもしれません。中学2年のとき、海上保安庁での職場体験を通して進路がより明確になりました。
「島国である日本にとって船舶による輸送は生活を支える重要な存在であることを知り、自分もそれに寄与する一員になりたいと感じるようになりました」
航海士になってその夢を叶えるために大島商船高専の受験を決意しました。ただ、その決意に反対するご両親を説得するのは大変でした。
「引っ込み思案のあなたに寮生活は耐えられない、といわれたのです。それでも毎晩食事のときに親を説得し認めてもらいました」
外航船員を目指そうと考えたのは、高専で学ぶうち、日本だけでなく世界中の人の生活に役立つ仕事がしたいと思ったからです。

充実した海事系専門教育で
即戦力となる知恵や技術が身につく

江藤智哉さん

学校生活を振り返っていちばん印象深いのは、海事系専門教育の充実ぶりです。真新しい練習船「大島丸」での航海実習や専用のシミュレータを使えば、実践的学びができ、現場で即戦力になれるだけの知識や技術を身につけられます。
記憶に残る経験は、4年生のとき、独立行政法人海技教育機構の練習帆船「日本丸」でシンガポールまで行った5カ月間の航海です。
「初めての長期航海で船酔いに悩まされるなど、つらいこともありましたが、そのたびに班の仲間たちと支え合い、励まし合うことで乗り越えることができました。無事に実習を終えた達成感と、仲間との強い絆は一生の思い出です」

寮生と悩みを相談したりする中で
引っ込み思案だった自分が変化

江藤智哉さん

自分の成長ぶりを感じるのは、両親に心配されていた寮生活に慣れ、仲間と深い絆を結べたことです。友だちと笑い合ったり悩みを相談したり、助け合ったりする中で引っ込み思案は自然と消えました。両親も「たくましくなったね」と言ってくれたそうです。
「規則正しい生活習慣が身につくのも大きなメリットです。決められた時間に食事をとること、門限といったルールもあります。また掃除や当番など、毎日のように決まっている役割にも責任を持って取り組む必要があります。こうした日常生活を送る中で基本的なマナーが身につき、社会にでたときに必要になる人間関係の築き方も自然と身につくような気がします」

長所である“誠実さ”を大切に
荷物を安心して預けられる船員に

江藤智哉さん

さて将来はどんな航海士になりたいと思っているのでしょう。
「船長になって、世界中の人が安心して暮らせる社会の実現に尽くしたいですね。そして私の長所である“誠実さ”を大切にしながら、お客様に安心して荷物を預けてもらえる信頼される船員を目指します。最終的には、世界をつなぐ船長として責任を果たし、海運を通じて世界経済を支えていきたいです」
江藤さんは「海を越えて人や物を運ぶ船とは、人間の挑戦と知恵の象徴だ」と言います。挑戦し続ける江藤さんのような航海士が未来の海運を牽引していくのです。

商船系高専生が語る
船と海と夢

教室だけではなく、船や海での実習を重ねながら、航海士、機関士としての知識と技術を身につけていく商船系高等専門学校。
5校の高専生が、商船系高専を志望した理由、学校での学び、船の魅力、海への思い、そして将来の夢を語りました。(2025年取材)