2025年インタビュー

鳥羽商船高等専門学校

大きな船を動かす機関士になるため
選んだのは150年の歴史をもつ伝統校

田口万葉さん

三重県鳥羽市にある鳥羽商船高等専門学校は2025年、創基150年を迎えます。全国の商船系高専5校の中で最も歴史があります。学科は、外航船員を養成する商船学科とエンジニアを養成する情報機械システム工学科。商船学科で、機関士をめざす学生に、鳥羽高専を志望したきっかけや印象に残る授業、将来の夢について聞きました。

“船ってカッコいいな”
その感激が高専に進む原動力に

田口万葉さん

商船学科機関コースの田口万葉(たぐち かずは)さんが船に惹かれたのは、両親の影響でした。
「母は船が好きでよく客船に乗り、一方、父はあらゆる乗り物が好きで、乗り物のイベントによく連れて行ってくれました。そのため、幼い頃から乗り物に触れる機会に恵まれていました。なかでも私が一番興味をもったのは大きい船でした。母と一緒に客船に乗ったときは、“船ってカッコいいな、こんな大きな物が動くんだ”と驚いたのを覚えています。それに船に乗ると陸からは見えない小さな星が見えたり、きれいな街の夜景を楽しめたりするのも魅力でした」

そこで鳥羽商船高等専門学校に進路を決めた田口さん。機関士を目指したのは、機械に興味があり、機械に囲まれた生活をしたいと思ったからです。

エンジニアとして大きな船を動かす
だから外航船員を目指す

田口万葉さん

入学後、外航船員を志望した理由について田口さんは、次のように話します。
「私は世界のいろいろなところに行きたいという希望以上に、大きな船を動かしたいという気持ちが強かったです。理由は、エンジニアとして大きな機関に魅力を感じるからです。大きく強力な機関を搭載する船となると外航船だなと思いました」
授業では、話しやすい雰囲気の教官にも助けられたと言います。質問しやすく、進路相談などにも親身に応じてくれたとのこと。またユーモアのある教官も多く、楽しく学べたそうです。

6000トンの練習船での実習
自分の成長を感じた

田口万葉さん

在学中でいちばん忘れられない思い出といえば、4年生の後半にあった実習です。乗船したのは、独立行政法人海技教育機構(JMETS)が保有する練習船「銀河丸」で、総トン数6,185。いつも実習に使っている学校の練習船「鳥羽丸」の2倍ほどの船でした。しかも5か月にわたる長期間航海。なかでも記憶に残っているのは、主機関の暖冷機作業。機関を本格的に使い始める前に暖める作業と、機関を停止させる前にエンジンを徐々に冷ます作業です。
「暖冷機作業の練習を何度も行い、最終的に実習生だけで暖冷機作業をやりとげ、実技試験をクリアしました。高専に入った頃は作業を見ているだけだった私が、自分から参加して作業でき、成長を実感できました」

先輩から安心して仕事を任され、
周りから慕われる機関士に

田口万葉さん

さて、田口さんは将来、どんな機関士になりたいと思っているのでしょう。
「まず、先輩から“この人に任せれば大丈夫”と思ってもらえるように成長し、また自分が上の立場になったとき、“この先輩ならば話しかけやすいし、質問しやすい”と頼られ、周りから慕われる機関士に、そして周りに気を配れるようになれたらと考えています」
大きな外航船の機関士として活躍する日は近い。

商船系高専生が語る
船と海と夢

教室だけではなく、船や海での実習を重ねながら、航海士、機関士としての知識と技術を身につけていく商船系高等専門学校。
5校の高専生が、商船系高専を志望した理由、学校での学び、船の魅力、海への思い、そして将来の夢を語りました。(2025年取材)